横浜市特別支援教育推進指針 (素案) 横浜市教育委員会 目次 【Ⅰ 総論】 1 策定の経緯・背景と趣旨 - 1 - (1) 経緯・背景 - 1 - ア これまでの本市の取組 - 1 - イ 取組のねらい等 - 1 - (2) 策定の趣旨 - 2 - (3) 指針の位置付け・他の計画等との関係 - 4 - (4) 指針の検討における現状を踏まえた基本認識 - 5 - 2 インクルーシブ教育に向けた本市の考え方 - 5 - (1) インクルーシブ教育への国の考え方 - 5 - (2) 横浜市におけるインクルーシブ教育の考え方等 - 6 - ア 本市のこれまでの考え方 - 6 - イ 横浜らしいインクルーシブ教育の考え方等 - 6 - (3) 特別支援教育推進指針の概念図 - 8 - 【Ⅱ 各論】 - 9 - 3  本市における特別支援教育の現状・課題と今後の方向性 - 10 - (1) 小・中・義務教育学校の一般学級の現状・課題と今後の方向性 - 10 - ア 学びの場の変更状況 - 10 - イ 校内支援体制 - 11 - ウ 特別支援教室 - 12 - エ その他 - 12 - 今後の方向性 - 14 - ア インクルーシブ教育モデル事業の検討 - 14 - イ 教育内容・校内支援体制の充実 - 14 - ウ 特別支援教室の充実 - 15 - エ 一人ひとりの実態に応じた適切な指導と支援の充実 - 15 - (2) 通級指導教室の現状・課題と今後の方向性 - 16 - 今後の方向性 - 18 - ア 通級指導教室の充実 - 18 - イ 協働型巡回指導の充実 - 18 - ウ 横浜市立高等学校における通級による指導の充実 - 18 - (3) 個別支援学級の現状・課題と今後の方向性 - 20 - 今後の方向性 - 23 - ア 個別支援学級の充実 - 23 - イ 交流及び共同学習の充実 - 23 - ウ 卒業後の進路の情報共有の充実 - 23 - (4) 特別支援学校の現状・課題と今後の方向性 - 24 - 今後の方向性 - 25 - ア 教育内容の充実 - 25 - イ ICTの更なる活用 - 25 - ウ センター的機能の更なる拡充 - 26 - エ 「協働研究推進ブロック」による研究研修 - 27 - (5) 医療的ケア等、個別の支援を必要とする児童生徒への対応 - 28 - ア 医療的ケア児の状況 - 28 - イ 肢体不自由児童生徒への対応 - 28 - ウ 特別支援教育支援員等の状況 - 28 - 今後の方向性 - 29 - ア 医療的ケア施策の充実 - 29 - イ 肢体不自由児童生徒への対応 - 29 - ウ 特別支援教育支援員等の配置 - 29 - 4 開かれた特別支援教育、関係機関の連携強化(医療、福祉、労働等) - 30 - (1) 地域療育センターとの連携 - 30 - (2) 横浜型センター的機能について - 30 - (3) 交流及び共同学習の推進に向けた考え方 - 30 - (4) 教育委員会事務局内・他局の連携強化 - 31 - (5) 就学時等の医療、福祉、卒業後の自立に向けた関係機関との連携強化 - 31 - ア 就学後の支援体制構築のための体制づくり、地域療育センター等、医療や福祉機関との連携強化 - 31 - イ 障害福祉サービス事業所、地域の障害者支援に関わる機関、労働関係機関、企業等の進路先などと連携、教職員や保護者に対する将来を見通すための情報提供 - 31 - 【Ⅰ 総論】 1 策定の経緯・背景と趣旨 (1) 経緯・背景  特別支援教育とは、障害のある子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、特別支援学校(注1) や個別支援学級(注2) 、通級指導教室(注3)だけでなく、一般学級においても、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。 ア これまでの本市の取組  本市では、平成16年4月に、21世紀を生きぬく子どもを育む新しい学校づくり、新しい教育の創造に向けて、障害のある子どもの教育を推進していくため、本市で初めてとなる「横浜市障害児教育プラン」を策定しました。また、平成21年12月には、「特別支援教育を推進するための基本指針」を策定し、インクルージョンの考えかたに沿いながら、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導・支援を保障することや、子どもたちの学び合いを通して豊かな心を育てて、共生社会に生きる子どもの育成を目指して、特別支援教育を推進してきました。 その取組の成果や課題を「横浜市教育振興基本計画」(第1期~第3期 平成22年~令和3年)に反映させて、特別支援教育のさらなる充実を図ってきました。特に「第3期横浜市教育振興基本計画」(平成30年~令和3年)では、主な取組として、全ての子どもが安心して学べる多様な学びの場の構築、一般学級在籍の特別な支援が必要な児童生徒への支援、障害特性に応じた個別支援学級における教育、特別支援学校、特別支援教育相談システムの充実をそれぞれ進めてきました。さらに、平成29年に告示された小・中学校の学習指導要領、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領、特別支援学校幼稚部教育要領に基づき、平成30年8月に「横浜市立学校カリキュラム・マネジメント要領特別支援教育編」を発行し、社会に開かれた教育課程の実現、育成を目指す資質・能力、主体的・対話的で深い学びの視点を踏まえた授業改善、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立などを進めています。 イ 取組のねらい等 本市では、特別支援教育を通じ、個別の教育的ニーズのある子どもたちに対して、自立と社会参加を見据え、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供する柔軟な仕組みや、連続性のある多様な学びの場を整備してきました。それぞれの場における学びを通して、幼児児童生徒が、授業内容を理解し、学習活動に参加している実感・達成感をもちながら、充実した学校生活を過ごし、その結果、生きる力を身に付けていくことを、本質的な視点として教育活動を行っています。  (2) 策定の趣旨  昨今、特別な配慮や支援を必要とする子どもたちが増加し、その障害も重度化、多様化しています。また、以下に示す国の動向からも、特別支援教育が、現在、大きな転換期を迎えており、より一層の推進・充実が求められています。 こうした国の動向や本市におけるこれまでの経緯を踏まえ、市教育委員会と学校現場とが特別支援教育の今後のほう向性について共通理解を図った上で、それぞれの役割を果たしていく必要があります。 そこで、改めて、本市における特別支援教育の現状と課題を整理し、今後概ね10年間を見据えた本市の特別支援教育の目指す姿を示し、特別支援教育の推進・充実を図るとともに、全ての教職員に向けた指針としていきます。 さらに、保護者や関係機関等、特別支援教育に関わる全ての関係者と共有し、児童生徒一人ひとりの豊かな成長を支える社会に開かれた教育課程の実現を目指します。 <特別支援教育に関する近年の国の動向> ・平成29年~:学習指導要領改訂・実施  特別支援学級や通級による指導における個別の指導計画等の全員作成、各教科等における学習上の困難に応じた指導の工夫  障害のある子どもたちの学びの場の柔軟な選択を踏まえ、幼稚園、小・中・高等学校と特別支援学校との学びの連続性を重視 一人一人に応じた指導及び自立と社会参加に向けた教育の充実 ・令和3年1月:「新しい時代の特別支援教育の在りかたに関する有識者会議報告」  障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を受けられる条件整備  通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備(高等学校における特別支援教育の充実を含む)  特別支援教育を担う教師の専門性の向上(全ての教師、特別支援学級・通級による指導を担当する教師、特別支援学校の教師)、教員育成指標に位置付け ・令和3年1月:「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(中教審答申)  「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善  全ての教育段階におけるインクルーシブ教育システムの構築による、全ての子供たちが適切な教育を受けられる環境整備 ・令和3年6月:「障害のある子供の教育支援の手引」  教育的ニーズの変化に応じ、学びの場を柔軟に見直すこと  一貫した教育支援の中で、就学先となる学校や学びの場における学びの連続性を実現   医療的ケア児の受入れに際し、就学に関わる関係者の全てが、理解しておくべき基本的な考えかた等  「教育的ニーズ」や「合理的配慮」等の障害のある子供の教育支援に係る基本的考えかた ・令和3年9月:「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」   医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資することや、安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に寄与 ・令和3年9月:「特別支援学校設置基準」の公布   特別支援学校を設置するために必要な最低限の基準とするとともに、地域の実態に応じた適切な対応が可能となるよう、弾力的かつ大綱的な規定 ・令和4年3月:「特別支援教育を担う教師の養成の在りかた等に関する検討会議」報告  採用後、10年以内に特別支援教育を複数年経験  特別支援学級等の教師による特別支援学校への人事交流の充実  校内研修、交換授業、OJTの推進  管理職の任用にあたり、特別支援教育の経験を考慮  学校経営ほう針等に特別支援教育に関する目標を設定し、校内体制を整備  など ・令和4年8月:「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針」   資質の向上に向けた指標に、教師に共通的に求められる具体的な資質の内容として、特別な配慮や支援が必要な子供への対応が位置付け ・令和4年12月:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について  「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童 生徒の割合(小学校・中学校8.8%、高等学校2.2%) ・令和5年3月:「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在りかたに関する検討会議 報告」  校内支援体制の充実(支援の対象とすべき児童生徒について幅広く把握し、必要な支援を組織的に対応)  通級による指導の充実(児童生徒が慣れた環境で安心して受けられるよう、自校通級や巡回指導を促進 等)  特別支援学校のセンター的機能の充実(特別支援教育に関する専門的な知見や経験等を有する特別支援学校からの小中高等学校への支援を充実) インクルーシブな学校運営モデルの創設(特別支援学校を含めた2校以上で連携し、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が交流及び共同学習を発展的に進める学校をモデル事業として支援) ・令和5年3月:「新たな教育振興基本計画(令和5年度~9年度)」閣議決定  誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 ・子供が抱える困難が多様化・複雑化する中で、個別最適・協働的学びの一体的充実やインクルーシブ教育システムの推進による多様な教育ニーズへの対応 ・支援を必要とする子供の長所・強みに着目する視点の重視、地域社会の国際化への対応、多様性、公平・公正、包摂性(DE&I)ある共生社会の実現に向けた教育を推進 ・ICT等の活用による学び・交流機会、アクセシビリティの向上など   (3) 指針の位置付け・他の計画等との関係  2030 年頃の社会を見据えて、横浜の教育が目指すべき姿を描いた「横浜教育ビジョン2030」(2018(平成30)年策定)と、そのアクションプランである「横浜市教育振興基本計画」のほう向性や施策・取組の状況を踏まえ、改めて、本市の特別支援教育の現状と課題について整理を行い、教員の専門性の向上等、各学びの場における主にソフト面に関する取組のほう向性を示しています。     ここに図が2つあります。ひとつめは、横浜教育ビジョン等の推移のイメージ図です。 横浜市の教育の理念・ほう向性は、横浜教育ビジョン(H18)で示されており、横浜教育ビジョン2030(H30年)へ発展しています。 施策・取組等を示すアクションプランは、第1期横浜市教育振興基本計画(H22)から第2期横浜市教育振興基本計画(H26)、第3期横浜市教育振興基本計画(H30)へと移り変わり、現在の第4期横浜市教育振興基本計画(R4)へと発展しています。 特別支援教育のほう向性・指針は、特別支援教育を推進するための基本指針(H21)から、主にハード面のほう向性を示す横浜市における特別支援学校の整備等に関する考えかたと、主にソフト面のほう向性を示す、横浜市の特別支援教育を推進するための基本指針令和5年度版)に発展しています。  ふたつめは、横浜教育ビジョン等の位置づけのイメージ図です。 横浜教育ビジョン2030を目指すべき理念に見据え、その土台として、第4期教育振興基本計画で施策・取組を示しています。また、第4期教育振興基本計画で示す各取組を実現するために、各事業をし年単位の予算を編成しています。 そして、第4期教育振興基本計画で示した特別支援教育の実現を、より具体的にするため、主にソフト面のほう向性を示す横浜市特別支援教育推進指針と主にハード面のほう向性を示す横浜市における特別支援学校の整備等に関する考えかたを策定しています。 この二つは、各事業の土台にもなる、より具体的な考えかたを示すものとして位置づけられます。  図の説明はこれで終わりです。 (4) 指針の検討における現状を踏まえた基本認識 ・本市では、平成29年度までに個別支援学級を小・中学校全校に設置し(令和3年度の全国の設置率83%)、一人ひとりの教育的ニーズを的確に見定め、それに最も的確に応えられるよう、連続性のある多様な学びの場の整備を進めてきました。(=本市の強みマルイチ) ・本市が全校に設置している特別支援教室は、本市の独自配置である児童支援専任教諭、生徒指導専任教諭や特別支援教育コーディネーターが校内の中心となって運営しています。さらに実践推進校として非常勤職員を配置する取組を進めるなど、一人ひとりの児童生徒の課題に応じた様々な支援(学習支援や不登校支援)を行い、気持ちの安定や校内での共通理解の効果が得られた等、成果を上げています。(=本市の強みマルニ) ・それに加えて、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱と各障害種の市立特別支援学校を運営しており、専門性を積み上げています。(=本市の強みマルサン) ・指針の検討にあたって、各学びの場の拡充を図ることに加え、特に一般学級において特別な配慮や支援が必要な子どもの受け入れを進め、後述するインクルーシブ教育を推進していく観点が重要です。一般学級に在籍する全ての児童生徒が「分かった」、「できた」を実感できる適切な指導・支援を行い、特別な配慮や支援が必要な児童生徒にも最適な学習を提供できる教育内容や校内支援体制の充実を進めることで、教職員のさらなる専門性向上の相乗効果も期待できます。 ・これまでの個別支援学級や特別支援教室の運営による知識経験、また特別支援学校によるセンター的機能など本市の強みを生かしながら、一般学級における特別な配慮や支援が必要な子どもが安心して学び続けられる体制構築を進めることで、本市のインクルーシブ教育の新たな展開を図ります。 2 インクルーシブ教育に向けた本市の考えかた (1) インクルーシブ教育への国の考えかた  令和4年9月に、国連から、障害のある子どものインクルーシブ教育の権利を認めることやそれを実現していくために国の行動計画を策定すること等を求める「日本のインクルーシブ教育に対する勧告」が出されています。 国は、国連の勧告を受けて、引き続きインクルーシブ教育システム(注5)を推進していくこととしています。そのような中で、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在りかたに関する検討会議の報告書(令和5年3月)では、「校内支援体制の充実や通級による指導の充実、特別支援学校のセンター的機能の充実、インクルーシブな学校運営モデルの創設」といった内容が取りまとめられています。国は、この報告書を受けて、よりインクルーシブな社会の実現に向けて、関連施策等の一層の充実を図ることが求められているとの認識を示しています。 (2) 横浜市におけるインクルーシブ教育の考えかた等 ア 本市のこれまでの考えかた ・本市においては、これまで下記のとおり、国の示すインクルーシブ教育システムの構築を進めてきました。 ・一人ひとりの教育的ニーズを的確に見定め、それに最も的確に応えられるよう、さらなる支援の充実を目指すこと。そのために、連続性のある多様な学びの場や教育活動の充実を図ること。 ・現在の学びの場での困難を補う柔軟な仕組みや、学びの場を柔軟選択できるように すること。 ・他ほう、特別支援学校のPTAの皆様や懇談会において、「全ての児童生徒が地域の学校に通い、同じ場で学ぶ環境の実現に向けた横浜市の考えかたを示すことが必要」との強いご要望もいただいていており、今までよりさらに踏み込んだインクルーシブ教育のほう向性を提示することが求められています。 ・ここで改めて、全ての子どもたちが、可能な限り地域の学校で共に学び、共生社会の担い手として育つことを目指すという理念に立って、横浜らしいインクルーシブ教育の考えかたについて整理します。 イ 横浜らしいインクルーシブ教育の考えかた等 (ア) 一般学級における新たな学びの推進 ・現在の教育課程、学級編成、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習による学習効果、学びのユニバーサルデザインの視点を踏まえ、一般学級において、子どもたちが自分の学びかたや学習進度を自分で選択するなど、主体的に学習に取り組む、新たな学びかたの実現にむけた研究に取り組みます。 ・一般学級において、全ての児童生徒が「分かった」、「できた」を実感できる適切な指導・支援、学びのユニバーサルデザインの推進を通じ、特別な配慮や支援が必要な児童生徒が安心して学び続けられるインクルーシブ教育の実現にむけて、教育内容や校内支援体制を図ります。 (イ) 進めかた等 ・新たな学びの推進にあたっては、1(4)で示したこれまでの本市の強みを生かして、できる限り一般学級において安心して学び続けられる仕組み(新たな学び)の検討・研究・モデル的実践に取り組みます。 ・モデル的実践と併せて、引き続きそれぞれの学びの場の更なる充実にも取り組み、個別最適な学び・協働的な学びの一体的充実により、全ての学びの場での横浜らしいインクルーシブ教育の実現を目指します。 (ウ) 配慮事項等 ・また、障害のある児童生徒が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させられる専門的支援を求め、本人にあった学びの場を選択することを尊重し、引き続き必要な支援を行います。 ・あわせて、小・中・義務教育学校・特別支援学校・高等学校に通う全ての児童生徒、保護者と学校が、インクルーシブ教育への理解を深められるよう取り組みます。  ここに図があります。 横浜らしいインクルーシブ教育の実現への道筋を表したイメージ図です。 図の上部に目指すべき目標として、横浜らしいインクルーシブ教育の実現、と書かれています。 図の下部には、一般学級、特別支援教室、通級指導教室、個別支援学級、特別支援学校と書かれていて、横浜市の多様な学びの場を表しています。 各学びの場から、横浜らしいインクルーシブ教育の実現、へ伸びている矢印には、横浜市が積み上げてきた強み(連続した多様な学びの場の充実を図り、得意なことを引き出し、可能性を伸ばす教育の実践)を土台として、一般学級ですべての児童生徒も安心して学び続けられる新たな学びの検討・研究・モデル的実践と書かれています。  図の説明はこれで終わりです。 (エ) 具体的な取組に向けて ・上記(ア)から(ウ)の状況を踏まえ、横浜らしいインクルーシブ教育の実現に向け、次のとおり取り組みます。 【ステップ1】(概ね5年程度を目安:令和6~10年度) ・個別支援学級での学びが相当と判断された児童生徒が、できる限り一般学級において安心して学び続けられる仕組み(新たな学び)を検討・研究・モデル的実践をします。(モデル事業の今後のほう向性は、P.14を参照) ・特別支援学校、通級指導教室、地域療育センター等の横浜型センター的機能が、一般学級の運営により効果的に機能を発揮できるような仕組みを検討・実践します。 ・小学校に併設する特別支援学校(中村、北綱島、東俣野)における交流及び共同学習の効果を検証し、副学籍交流を促進します。 ・引き続き、一般学級、個別支援学級、特別支援学校等、連続性のある多様な学びの場(柔軟な学びの場の変更)や教育活動の充実を図ります。 【ステップ2】(概ね5年程度を目安:令和11~15年度) ・障害の有無にかかわらず、すべての児童生徒が安心して学ぶことができる基礎的環境整備、合理的配慮の提供について、検証します。 ・併せて、地域に居住するすべての児童生徒が一般学級で共に学ぶことによる教育的効果について、学校、保護者と確認・検証を行います。その際、特別な配慮や支援を必要とする子どもたちだけの教育的効果だけではなく、一緒に学ぶ子どもたちの教育的効果も検証します。 (3) 特別支援教育推進指針の概念図 「横浜教育ビジョン2030」、「横浜市立学校カリキュラム・マネジメント要領 特別支援学校編」の理念に基づき、個に応じた切れ目ない支援を行うことで、一人ひとりの子どもが将来、その能力を発揮し、共生社会の一員として、ともに認め合い、支え合い、誇りをもって生きていくことができるよう、横浜らしいインクルーシブ教育の実現に向けて、特別支援教育施策の一層の充実・整備を行っていきます。 【Ⅱ 各論】 3  本市における特別支援教育の現状・課題と今後のほう向性 (1) 小・中・義務教育学校の一般学級の現状・課題と今後のほう向性  小・中学校等には、一般学級においても特別な配慮や支援を必要とする児童生徒が在籍しています。様々な疾患や肢体不自由などにより医療的ケアや介助が必要な場合や、発達障害やLDなど、学びかたに工夫や配慮、見守りが求められる場面が増えています。また、将来的なインクルーシブ教育の実現に向けて、特に「一般学級において特別な配慮や支援が必要な子どもが安心して学び続けられる体制をどのように構築していくか」という視点が重要です。 そこで、学びの場の変更等が起こっている現状を認識し、一般学級に在籍する全ての児童生徒が「分かった」、「できた」を実感できる適切な指導・支援を行うため、教育内容・校内支援体制の充実を進めます。 ア 学びの場の変更状況 ・国の調査で35人学級の8.8%(約3人)に知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すとされている中、一般学級で特別な配慮や支援が必要な子どもへの対応について、校内支援体制を構築することが難しいという声があります。 【小学校】 ・個別支援学級の人数は、1学年から、学年が高くなるにつれて、在籍児童生徒が増えています。それに対応して、教育相談件数も小学校1~3年生が比較的高く、4年生・5年生で減少する状況です。この状況から、学校側においても、特別な配慮や支援が必要な子どもにあった学びの場の変更を意識していることがうかがえる一っぽうで、一般学級での学びの継続の視点より、学びの場の変更を優先してしまう傾向が懸念されます。   【中学校】 ・小学校から中学校への進学時に、高等学校以降の進路を考え、個別支援学級から一般学級へ、または、本人に合った学びの場として特別支援学校へ、学びの場の変更が一定程度出ています。 ・小学校と比べ、中学1年生から3年生の教育相談件数は少なく、学年が上がるにつれて減少傾向であることから、中学在学中に学びの場を変更する生徒は少ない傾向です。この傾向の背景としては、周りの生徒の成長に伴い、特別な配慮や支援が必要な生徒の特性等の理解が進むこと、また、特別な配慮や支援が必要な生徒が個別支援学級の判断が出ても、そちらには移りたくない(障害受容が困難)といった状況等が考えられます。 イ 校内支援体制 ・校長のリーダーシップのもと、特別支援教育コーディネーター(注6) 、児童支援専任や生徒指導専任(以下、「特別支援教育コーディネーター等」という。)が中心となり、学校組織の強化、関係機関等との連携を進めている一っぽうで、特別支援教育の必要性の増大から特別支援教育コーディネーター等に業務が集中してしまう学校も少なくありません。 ・誰もが「わかる授業実践」や「安心して学べる場の提供」など、誰一人取り残さないための学びの充実に向けて、個別の教育支援計画・個別の指導計画を学校と本人・保護者が共有、合意形成を図りながら進めることや、特別支援教育コーディネーター等が専門性を十分に発揮するために、教職員一人ひとりの特別支援教育に関する専門性や学校の組織的な対応力の向上を図る必要があります。 ウ 特別支援教室 ・特別支援教室(注7)では、教科指導や自分なりの学びかたを身に付けるための支援のほか、登校支援や在籍学級への適応に向けた支援など、一人ひとりの児童生徒の課題に応じた様々な支援が行われています。 ・特別支援教室実践推進校に選定された学校には、非常勤講師(週12時間)が配置されます。 ・特別支援教室実践推進校に対して行ったアンケート調査からは、学習支援や不登校支援、気持ちの安定や校内での共通理解の効果が得られたとの回答が多くありました。特別支援教室実践推進校には非常勤講師を配置し、特別支援教育コーディネーター等を中心とした校内支援体制が充実することで、学習支援や不登校支援の効果を実感するなどの成果を上げています。 ・特別支援教室の有効性を感じている学校が多い中、実践推進校が終了した後にも継続的・安定的に活用していくための仕組み作りが必要です。 ・小学校において、特別支援教室に携わる教員の割合が低いことから、教職員への特別支援教室を利用する児童生徒の状況の共有や特別支援教室の有効性を伝える意識啓発(取組の好事例を各校で共有すること等)が必要です。 エ その他 ・特別支援教育総合センター(以下「特総センター」と言います。)における就学相談で、身辺自立がある程度確立していても、医療的ケアや食形態(特別食)への配慮が必要な幼児が増加傾向にあります。そのため、現在は一般校では実施していない特別食の提供など、今後、環境面や健康面の対応が必要になる可能性があります。  ここに図が2つあります。  ひとつめは、令和4年度における特別支援教室の主な利用目的を表した図です。 小学校の利用目的の割合は、次のとおりです。 学習支援69.8%、登校支援11.4%、気持ちの安定14.1%、社会性4.4%、その他0.2%。 続いて、中学校での利用目的の割合は次の通りです。 学習支援27.1%、登校支援49.3%、気持ちの安定15.9%、社会性6.9%、その他0.9%。  ふたつめは、令和4年度における小中学生の特別支援教室利用の効果等を表した図です。 学習支援の効果、登校支援の効果、気持ちの安定の効果、社会性の効果、校内体制の工夫、校内の共通理解の6項目について、大変そう思う、そう思う、ややそう思う、あまり思わない、全く思わない、その目的はない、という回答項目の割合を表しています。 学習支援の効果については、大変そう思う36.6%、そう思う37.1%、ややそう思う20.9%、あまり思わない3.3%、全く思わない0.2%、その目的はない2.3%でした。 登校支援の効果については、大変そう思う41%、そう思う38.1%、ややそう思う9.8%、あまり思わない1.6%、全く思わない0.0%、その目的はない9.4%でした。 気持ちの安定の効果については、大変そう思う40.2%、そう思う41.4%、ややそう思う8.2%、あまり思わない1.6%、全く思わない0.0%、その目的はない9.6%でした。 社会性の効果については、大変そう思う13.9%、そう思う26%、ややそう思う28.7%、あまり思わない8.8%、全く思わない0.2%、その目的はない22.3%でした。 校内体制の工夫については、大変そう思う13.9%、そう思う26%、ややそう思う23.1%、あまり思わない8.3%、全く思わない0.2%、その目的はない0%でした。 校内の共通理解については、大変そう思う24.8%、そう思う46.3%、ややそう思う23.1%、あまり思わない5.4%、全く思わない0.4%、その目的はない0%でした。  図の説明はこれで終わりです。   今後のほう向性 ア インクルーシブ教育モデル事業の検討 ・インクルーシブ教育の実現に向けては、一般学級において、学びのユニバーサルデザインの視点を踏まえ、子どもたちが自分の学びかたや、学習進度を自分で選択するなど、主体的に学習に取り組む新たな学びかたを取り入れる、教育課程や一斉授業での教育ほう法を見直す等、多様な児童生徒による学び合いを生かす取組等が必要です。 ・児童生徒の実態に応じて、特別支援学校や通級指導教室の専門性の高い教員や専門性をもった支援員による支援等、従来の枠組みに捉われない検討が必要です。 ・そのため、できる限り一般学級で学び続けられる仕組みの構築(モデル的実践)に向けて、検討・実施します。なお、モデル的実践にあたっては、教育委員会事務局だけではなく、大学等との連携も視野に入れ、安定的・継続的な仕組みとなるよう検討を進めます。 ・これらをインクルーシブ教育モデル事業として検討を進め、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実による、「主体的・対話的で深い学び」を推進していきます。 イ 教育内容・校内支援体制の充実 ・モデル的実践に平行して、全ての児童生徒が「分かった」、「できた」を実感できる適切な指導・支援を行うため、全ての教員が特別支援教育の目的や意義を理解し、それらを踏まえた授業づくりを行っていきます。 ・校長のリーダーシップにより全校的な支援体制を構築し、また、特別支援教育コーディネーター等が中心となり、校内で継続した研修の場、ケース会議などを組織的に実施します。 ・教室内の物理的な環境整備(落ち着いて学習できる雰囲気づくり)に加え、各教科等において、児童生徒一人ひとりの「困難さ」に応じたICT活用や視覚化、細分化など、具体的な支援や配慮を行っていきます。  ・特別な支援を必要とする児童生徒が、特別支援教室や個別支援学級から在籍級又は交流級の授業に参加できるよう、ICTを効果的に利用した新たな学びを構築していきます。 【参考】効果的なICT活用 【小学校 個別支援学級(理科)】 顕微鏡の操作は難しく、思うように観察することができないことがあります。そこで、接眼レンズにタブレット端末を取り付け、画像を撮影することで、子どもが観察カードに記録しやすくします。また、受精卵を動画でも撮影できるので、受精卵の中の心臓や血液の動きも観察可能となります。 【中学校 個別支援学級(体育)】 教員が実技の様子を動画撮影し、 生徒の端末に送ります。 生徒たちは、自分の実技の様子を動画で確認するなど、授業の振り返りに活用します。ロイロノートのテキスト機能を活用すると、お互いの良かったところや課題などを視覚的にも意見交換や意見の比較をすることができます。 ウ 特別支援教室の充実 ・特別支援教室実践推進校を中心に、特別支援教育コーディネーターを中核に据えた様々な取組により、各校において児童生徒の学習支援や心理的な安定など、一定の成果を上げています。 ・そのため、特別支援教室実践推進校の拡充や通級指導教室の利用者が多い学校に特別支援教室を活用して通級指導を行うことができる「校内通級指導教室」のモデル実施など、児童生徒の実態に応じた取組を展開していきます。 エ 一人ひとりの実態に応じた適切な指導と支援の充実  ・一人ひとりの実態に応じた適切な指導と支援のためには、個別の教育支援計画・個別の指導計画は大変重要なツールです。そのため、横浜市においては、国の取組よりも先んじて作成を進めてきました。 ・現在は、個別の教育支援計画は、特別支援学校、個別支援学級、通級指導教室利用者、特別支援教室利用者に作成しています。また、個別の指導計画は、個別の教育支援計画の対象者に加え、TT(ティーム・ティーチング)等の支援が必要な児童生徒や特別支援教育支援員制度利用者に対しても作成しています。 ・また、学びの場の変更に伴う教育相談においても、これまで学校が支援してきた過程を把握するため、個別の教育支援計画・個別の指導計画の提出を求めています。 ・作成に当たっては、個別の教育支援計画は、本人・保護者と一緒に作成、個別の指導計画は本人・保護者の同意を得ることが望ましいとしてきましたが、一っぽうで、学校のみで作成を進めることや、教員の考えのみを提示するというケースもあるため、今後、学校と本人・保護者が共有、合意形成が図られることが大切という視点を発信していきます。 ・さらに、児童生徒の障害状況等に応じて、保護者の同意のもと、保護者から福祉や医療といった関係機関等に情報提供を行っていただき、外部の専門家に入ってもらうことなどを通じて、当該児童生徒の支援に役立てていきます。 ・一般校おける特別食の提供等については、実施にあたっての検討課題等を整理するとともに、教育委員会事務局内で今後の考えかたを検討します。 まとめ ・インクルーシブ教育の実現に向けて:インクルーシブ教育モデル事業の検討。 ・教育内容・校内支援体制の充実:特別支援教育コーディネーター等を中心とした、校内体制の充実。ICTを効果的に利用した新たな学びを構築。 ・特別支援教室の充実:特別支援教室実践推進校の拡充。特別支援教室を活用して校内通級指導教室のモデル実施。 ・一人ひとりの実態に応じた適切な指導と支援の充実:個別の教育支援計画・個別の指導計画の重要性を発信。必要に応じて、関係機関等へ情報提供や連携支援(全ての学びの場共通の考え)   (2) 通級指導教室の現状・課題と今後のほう向性 現状・課題 ・通級指導教室を利用する児童生徒数は、平成18年度の1,224人から令和4年度2,918人となり、17年間で1,694人(約2.4倍)増加しています。そのため、入級希望者の増加により、各通級指導教室の過大規模化が課題となっています。 ・特総センターにおける通級指導教室の判断数は、令和2年度までは増加傾向で、令和3年度もほぼ横ばいの状況ではありましたが、令和4年度は減少しました。新型コロナウイルスの影響による減も推測されますが、小学校では、保護者の就労状況等から、通級指導教室に児童生徒を送迎できずに、通級を選択できない状況もあると考えられます。 ・一般学級の児童生徒数が学びの場を継続するためには、通級指導教室の支援センター機能による一般学級への更なる支援が欠かせません。 ・通級指導教室における更なる専門性の担保に向けて、経験が豊かなかたからの引き継ぎほう法や継続した人材育成の仕組みが必要です。 ・小学校における情緒障害通級担当教員が児童の在籍校で担任と共に指導等を行う協働型巡回指導により、「特性を理解できる」「指導・支援の具体がわかる」と感じている一般学級の担任が90%以上となっており、協働型巡回指導の効果が得られています。 ・通級利用の相談の際に、保護者の就労状況等により通級指導教室への送迎ができないことから通うことを諦めるかたがいる状況があること、不登校の児童生徒のかかわり先として、通級指導教室を頼ってくる事例が増えてきている状況があることも傾向として見られます。 【自閉症/情緒障害・LD/ADHD】  自閉症/情緒障害・LD/ADHDについては、増加傾向です。特に小学校中学年からの増加が顕著です。 【難聴・言語障害】  難聴は、ほぼ横ばい状況ですが、言語障害は小学校1年生から3年生まで増加傾向であり、小学校4年生以降は減少傾向です。中学校における指導については、障害状況だけではなく、生徒の成長に伴う複合的な要因を踏まえての指導となるため、特に専門性を向上させるための仕組みが必要です。 【弱視】  弱視の人数規模は、ほぼ横ばい状況です。加えて、担当教員は、弱視個別支援学級への支援や視覚障害のある児童生徒への支援を担っているため、専門性の担保が横浜市全体の視覚障害教育の充実につながっています。 ・協働型巡回指導について、令和元年度から小学校の情緒障害通級指導教室では、協働型巡回指導をスタートさせ、令和4年度には、情緒障害通級指導教室設置校の12校全てで実施しています。それにより、対象児童の在籍級への適応促進や在籍学校の教員の専門性の向上や校内支援体制の充実が図られています。 ・学校の協働型巡回指導と合わせて、横浜型センター的機能(注8)による学校支援をさらに充実させ、横浜市全体の特別支援教育に関する専門性の向上を図るため、各通級指導教室の指導内容やほう法を見直す必要があります。 今後のほう向性 ア 通級指導教室の充実 ・小・中学校の通級指導教室では、入級希望者の増加による過大規模化等に対応するため、令和7年度を目標に小学校1校、中学校1校を増設します。加えて、必要に応じて各教室の改修も進めていきます。 ・通級指導教室においてもICTを活用し、在籍校との連携・協働に活かします。 イ 協働型巡回指導の充実 ・引き続き、児童生徒の在籍校における学習上又は生活上の困難を改善・克服を目指し、特別支援学校の通級指導教室担当教員が専門性を発揮して協働型巡回指導を行います。 ・児童生徒の在籍学級における適応促進や在籍校の教員の専門性の向上や校内支援体制の充実を図るため、小学校の情緒障害通級指導教室に加えて、盲特別支援学校の弱視通級指導教室においても、協働型巡回指導を開始します。 ・肢体不自由、病弱の児童生徒が、可能な限り地域の学校の一般学級で学び続けるため、特別支援学校の教員が一般学級における支援に入れる仕組み等について、検討します。 ウ 横浜市立高等学校における通級による指導の充実 ・横浜市立高等学校に通う生徒の障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服するため、令和5年度から、横浜総合高等学校を拠点校として、自閉症/情緒障害・LD/ADHDの生徒への特別の指導の実施(自校通級)と、盲特別支援学校及びろう特別支援学校において弱視、難聴・言語障害の通級による指導(他校通級)を実施しています。さらに、令和6年度からは、横浜総合高等学校の体制を強化し、同校の通級指導担当教員が、その他の市立高等学校の生徒に対する巡回指導も実施します。 【参考:通級指導教室と在籍校でのICT活用】  通級指導教室で書字が苦手な児童にタブレットの音声入力を指導します。  その指導内容を通級担当の教員が、協働型巡回指導で、在籍校の担任に伝えます。この児童は書字が苦手で、テストの解答にも苦手意識あったので、スキッチというアプリでテストを撮影し、音声入力で解答するするほう法を通級担当教員が在籍校の担任に伝えました。これにより、書字に苦手意識のあった児童が自信をもってテストの答案を作成することができました。 まとめ ・通級指導教室の充実:令和7年度を目標に小学校1校、中学校1校を増設 ・協働型巡回訪問指導の充実:盲特別支援学校の弱視通級指導教室においても、協働型巡回指導を開始。特別支援学校教員が一般学級における支援に入れる仕組み等について、検討。 ・高校通級の充実:自校通級及び他校通級の実施。横浜総合高等学校の通級指導担当教員による他の市立高等学校への巡回指導の実施。 (3) 個別支援学級の現状・課題と今後のほう向性 ・小・中・義務教育学校では、平成29年度に個別支援学級の全校設置が完了しました。個別支援学級に在籍する児童生徒の人数は、平成18年度の3,274人から、令和4年度は10,471人となり、17年間で7,197人(約3.2倍)増加しています。 ・特総センターにおいて、この3年間で個別支援学級の自閉症情緒障害の判断数が大幅に伸びています。また、知的発達レベル別に相談件数を抜き出したところ、IQが境界~標準域までの相談が約7割を占めています。このことから、知的発達の遅れがなく、行動面・情緒面を含めた特性がある児童生徒の学びの場について、保護者が学びの場の選択を迷いやすいこと等が考えられます ・学習内容や課題が近接している児童生徒でグループを組み、協働的な学びを行ったり、環境を整えたりすることで教育効果の向上が図られるようになってきましたが、一っぽうで、指導や学級運営に専門性を必要とするにもかかわらず、校内体制の事情等から、やむを得ず担任が毎年交代する等の状況もあり、専門性の向上が追い付いていない状況です。 ・障害の重複化や多様化という状況もあり、肢体不自由や聴覚障害など、より障害特性に応じた対応が求められる児童生徒については、現在設置されている障害種(知的障害、自閉症・情緒障害、弱視)の個別支援学級では対応が難しい場合も見受けられるため、障害特性に応じた個別支援学級の設置を検討する必要があります。 【知的障害】 ・教育課程の状況(令和3年度)について、知的障害学級では、当該学年の学習のみをしている割合は小学校14%、中学校2%、当該学年と下学年の学習をしている割合が小学校34%、中学校38%、下学年の授業のみをしている割合は小学校33%、中学校44%、知的障害の特別支援学校相当の授業をしている割合が小学校19%、中学校17%です。 ・知的障害個別支援学級に在籍する児童生徒の状態は多様化しています。そのため、重度知的障害や知的・肢体の重複障害のある児童生徒に対する指導・支援の専門性の向上、多動傾向など、様々な状態像の児童生徒が在籍する学級運営を行うための支援体制が必要です。 【自閉症・情緒障害】 ・教育課程の状況(令和3年度)について、自閉症・情緒障害学級では、当該学年の学習のみをしている割合は小学校52%、中学校7%、当該学年と下学年の学習をしている割合が小学37%、中学校55%、下学年の授業のみをしている割合は小学校11%、中学校38%です。 ・在籍児童生徒数が増えてきている中、一人ひとり取り扱っている主たる教育課程が異なるため、知的障害学級と同じく、専門性の向上、多動傾向など、様々な状態像の児童生徒が在籍する中での学級運営を行うための支援体制が必要です。 【弱視】 ・全盲の児童生徒への学習ツール(点字指導、教材準備)の情報が不足しています。これまで、多くの学校で1名の在籍でしたが、複数の児童生徒が在籍する例が出てきており、指導体制の拡充が必要です。また、専門性のある担当教員の確保も課題です。 ※原則として知的障害と併せて発達障害等がある児童生徒((例)知的障害と自閉スペクトラム症を合わせ有する場合など)は、知的障害学級に含まれています。 ・個別支援学級の教育課程・各教科等の取扱い (1)知的障害個別支援学級 ア 当該学年の各教科等の目標、学習内容を検討 イ アが困難な場合には、下学年の目標、学習内容等を検討 ウ さらに難しい場合には、特別支援学校(知的障害)各教科等の目標、内容を検討 (2)自閉症・情緒障害個別支援学級、弱視個別支援学級 ア 当該学年又は下学年の各教科等の目標、学習内容を取り扱う 【個別支援学級卒業後の進路の状況】 ・中学校個別支援学級卒業後の進路について、約36%はサポート校、技能連携校等の特別支援学校以外に、約19%は、企業就労を目指す市立高等特別支援学校、約17%は県立支援学校分教室、残りの約28%は特別支援学校に進んでいます。 ・選択肢が広がったことによる担任と保護者への情報共有が難しくなっているとの声があります。背景には、一連の流れを説明できる媒体がないことに加え、多様化する進路情報を個別支援学級担任が把握することが難しくなっている状況が考えられます。 ・保護者が卒業後の進路が見えづらいという声があることから、小学校から中学校の個別支援学級への接続、中学校から進路先への接続について、更なる情報共有・連携が必要です。 今後のほう向性 ア 個別支援学級の充実 ・個別支援学級では、在籍する児童生徒数の増加と共に、障害の多様化が進んでいます。多様な児童生徒の教育的ニーズや障害特性に適切に対応していくため、教職員の専門性向上に向けた学級運営のポイント等の周知を進め、個別支援学級の教育内容や教育環境の整備・充実を図ります。 ・保護者との連携を大切にし、信頼される学級経営を目指して、引き続き、保護者、本人の願いを丁寧に聞き取り、教育的ニーズを把握したうえで、個別の教育支援計画・個別の指導計画を作成し、目標の共有を進めます。 ・また、本人・保護者との個別の教育支援計画・個別の指導計画の合意形成や共有ほう法等を改善し、更なる活用を図ります。 イ 交流及び共同学習の充実 ・交流及び共同学習については、相互のふれあいを通じて豊かな人間性を育むことと教科等のねらいの達成を目的として、一体的に取り組むことができる非常に重要な取組です。 ・「交流及び共同学習」の目的や主たる教育課程、実施期間、教科等を、個別の教育支援計画・個別の指導計画を活用し、本人・保護者と合意形成をして実施していきます。 ウ 卒業後の進路の情報共有の充実 ・小学校段階から中学校段階、高等学校段階、さらにその後の進路等も見通しをもちながら、前籍校での支援内容やほう法、現在の教育的ニーズや中長期的な目標等について、個別の教育支援計画を柱に情報共有を行い、学校間および福祉・医療・労働機関との円滑な連携・接続、連続性のある支援につなげていくことが大切です。 ・引き続き、個別支援学級の初担任者向けの研修や中学校特別支援教育研究会等において、進路先の状況等の情報共有を進めます。 ・個別支援学級の担任が、保護者や本人と小学校段階から高等学校段階卒業後の進路先を考えるための進路情報等をまとめたパンフレット等の媒体作成を検討します。 まとめ ・個別支援学級の充実:教職員の専門性向上に向けた学級運営のポイント等の周知。個別の教育支援計画・個別の指導計画の着実な実施。 ・交流及び共同学習の充実:個別の教育支援計画・個別の指導計画を活用し、本人・保護者と合意形成をした交流の実施 ・卒業後の進路の情報共有の充実:個別支援学級の初担任者向けの研修の充実。保護者や本人と進路先を考えるための進路情報媒体作成の検討。   (4) 特別支援学校の現状・課題と今後のほう向性 ・本市には視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の全ての障害種の市立特別支援学校13校があります。平成24年度から令和3年度までの10年間で、学校数は1校増加(平成31年4月に左近山特別支援学校を新設)していますが、在籍する幼児児童生徒数は、ほぼ横ばいの状況です。 【知的障害】 ・児童生徒数の増加に加えて、在籍する児童生徒の障害が多様化しており、一人ひとりの教育的ニーズに合わせた教育課程の見直しが必要です。 【知的障害(高等特別支援学校)】 ・中学卒業後の進路が多様化(県インクル校、サポート校等)しており、魅力ある学校づくりに向けて、中学校とのさらなる連携強化が必要です。 ・卒業後の社会的自立に向け、自己理解を促し、主体性や協働性を育むとともに、自分の想いや願いを言語化し、相談力を高める実践を通して、生徒のキャリア発達を促す教育をさらに充実させていく必要があります。 ・高等特別支援学校卒業後に、生徒が安心して長く働き続けられる環境整備が必要です。 【肢体不自由】 ・高等部等における教科免許所有者が不足しており、当該学年の教科を学習する、いわゆる準ずる教育課程を履修する生徒への対応を検討する必要があります。 ・新型コロナウイルスの影響等で、極力身体接触を避ける状況が続いたことから、教員の身体介助スキルを継承していく仕組みが必要です。 【視覚障害】 ・重複障害のある児童生徒が増加している傾向があり、視覚障害以外の専門性の向上が必要です。 ・市内1か所の学校であるため、教員の視覚障害にかかる専門性の継承や専門性を担保する仕組みの検討が必要です。 【聴覚障害】 ・重複障害のある児童生徒が増加している傾向があり、聴覚障害以外の専門性の向上が必要です。 ・市内1か所の学校であるため、教員の聴覚障害にかかる専門性の継承や専門性を担保する仕組みの検討が必要です。 ・人工内耳等の医療発達により、一般校に通う児童生徒が増加しているため、特別支援学校としてのセンター的機能の充実が必要です。 【病弱】 ・入院や長期療養中の高校生への学習支援が必要です。 今後のほう向性 ア 教育内容の充実 ・授業時数、日課表、学習集団の編制の見直し、複数の学校間での遠隔授業の実施、校内外研究の充実など、教育課程や授業改善、教員の指導力向上の具体的な取組を進めます。 ・個別の指導計画の実施状況の評価と改善点を次年度の年間指導計画に反映させるなど、教育課程の評価と改善につなげます。 ・これらの教育課程改善等の取組を通して、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげていきます。 ・児童生徒のキャリア発達を促す教育の充実を図るとともに、自分の想いや願いを表出し、適切な自己選択・自己決定につなげられるよう、本人を中心とした意思決定支援を推進します。 ・教職員の更なる専門性の向上に向けて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、手話通訳士等の専門家等との連携強化に取り組みます。また、併せて、卒業後を見据えて就労先企業との連携強化にも取り組みます。 ・病弱について、継続して医療又は生活規制を必要とする高等部段階の生徒に対応するため、オンラインを活用した学習支援の検討もあわせて行います。 イ ICTの更なる活用 ・合理的配慮の視点から、それぞれの障害の状態に応じて、GIGA端末に加え、点字ディスプレイなどの視覚補助具やコンピュータ等の情報機器、視線入力装置等も積極的に活用し、指導の効果を高める取組をより一層、進めていきます。 ・具体的には、特別支援学校の準ずる教育課程を履修する児童生徒同士がオンラインでつながり、同じ授業に参加したりできるよう、ICTを効果的に利用し、空間的・時間的制約を緩和する新たな学びを構築します。 ・GIGA端末やデジタル教科書等の日常的な活用を推進する等、ICTを効果的に活用することにより、これまでにない学習活動も可能となることから、その新たな可能性を個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた授業改善につなげていきます。 【参考:特別支援学校でのICT活用】 ・デジタル教科書を使用し、教科書のページも自分でめくれるようになりました。自宅からオンラインで参加している同級生と、意見交換もできるようになりました。 ・小説の登場人物の相関関係を、アプリを使って整理しています。色の使い分けをしながら、考える場面から発表する場面につなげています。 ・画面表示や操作ほう法等の端末設定を個々の児童生徒に合わせることに加え、視線入力装置などの入出力支援装置や、テレプレゼンスロボットを試行的に活用しています。 ウ センター的機能の更なる拡充 ・小・中学校等が横浜型センター的機能を積極的に活用することができるよう、特別支援学校は、特別な配慮が必要な児童生徒に対する支援ほう法や特別支援教育に関する教材教具等を発信したうえで、各校のニーズや課題に対応した適切な支援を行います。 ・研修等により、特別支援教育コーディネーターなど、横浜型センター的機能を担う人材の専門性の向上や人材育成を継続的に行っていきます。また、学校全体としてセンター的機能の発揮に向けて、教職員の意識や専門性の向上に努めます。   エ 「協働研究推進ブロック」による研究研修 ・小・中学校等と特別支援学校の教員が互いの授業研究会に参加するなど、相互に専門性の向上を図る取組として、令和5年度から、左近山小学校、左近山中学校、左近山特別支援学校において、「協働研究推進ブロック」による研究研修を進めています。 ・令和6年度以降、他障害種の特別支援学校と近隣の小・中学校等との協働研究推進ブロックを拡充し、令和7年度までに4か所実施します。 まとめ ・教育内容の充実:個別の教育支援計画・個別の指導計画等を活用した教育課程や授業改善。教職員の更なる専門性の向上に向けた専門家等との連携強化。 ・ICTの更なる活用:特別支援学校の準ずる教育課程を履修する児童生徒への新たな学びの構築。GIGA端末やデジタル教科書等の日常的な活用の推進 ・センター的機能の更なる拡充:小・中学校等が横浜型センター的機能を積極的に活用できるための工夫。研修等による横浜型センター的機能を担う人材の継続的な育成。 ・「協働研究推進ブロック」による研究研修:特別支援学校と近隣の小・中学校との協働研究推進ブロックを拡充(令和7年度までに4か所)   (5) 医療的ケア等、個別の支援を必要とする児童生徒への対応 ア 医療的ケア児の状況 ・現在、小・中・義務教育学校には医療的ケアを要する児童生徒が複数在籍しており、必要な時間帯に看護師等を派遣する等の対応を行っています。今後は、いわゆる医療的ケア児支援法の趣旨も踏まえつつ、児童生徒が、自身の医療的ケアと共存し、安心安全な学校生活を送るとともに、医療と共に生きる力を獲得できるよう支援していくことも重要です。 ・肢体不自由の特別支援学校については、これまで学校内では実施していない新たな医療的ケアへの対応が求められており、学校看護師の体制を拡充しています。また、これまで人工呼吸器を使用している児童生徒については、日中の保護者の付き添いが必須とされていましたが、これの解消に向けて取り組んできました。今後、宿泊行事時の対応や訪問籍のかたの定期的なスクーリングへの対応が必要です。 ・学校での医療的ケアの中心を担う学校看護師の人材の確保が課題です。  ここに図があります。特別支援学校(肢体不自由)において医療的ケアを実施している児童生徒数の推移を表した図です。 平成25年は177人、平成26年は178人、平成27年は174人、平成28年は183人、平成29年は180人、平成30年は186人、令和元年は184人、令和2年は178人、令和3年は152人、令和4年は160人で推移しています。  図の説明はこれで終わりです。      イ 肢体不自由児童生徒への対応 ・肢体不自由等で車いすを使用する児童生徒が在籍又は入学する市立小・中・義務教育学校に、機器の貸出や、未設置校へのエレベータの設置を優先して進めています。 ・肢体不自由や内部疾患のため、手すりや段差解消のためのスロープの設置、トイレ改修によりオストメイト等を設置するなど、校舎内のバリアフリー化について、継続的な取組が必要です。 ・小・中学校等で車いすを使用する児童生徒が様々な活動を体験し、経験を広げることを目的として、特別支援学校の設備を活用したボッチャや水泳などの体験会を開催しています。 ウ 特別支援教育支援員等の状況 ・小・中・義務教育学校において、肢体不自由や知的障害があり、食事、移動、着替え、排泄等の支援や、発達障害等により特性に応じた学習活動への働きかけを必要とする児童生徒に対し、校内支援体制の充実を目的として、介助や見守りを行う特別支援教育支援員(有償ボランティア)を配置しています。 ・聴覚障害のある児童生徒の情報保障として、授業等の場面でノートテイクを行うボランティアを配置しています。 ・支援ニーズの高まりにより、ボランティアの担い手を継続して確保していく必要があります。 今後のほう向性 ア 医療的ケア施策の充実 ・「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」の趣旨に基づき、特別支援学校においては、引き続き、学校看護師の体制を拡充し、人工呼吸器をはじめ、高度な医療的ケアが必要な児童生徒の保護者の付添解消や通学支援の取組を充実させていきます。 ・日中の保護者の付添解消に加え、宿泊行事への付添軽減に向けたモデル的取組を検討します。また、通学支援や学校看護師と教員の協働による医療的ケアのさらなる充実を通して、訪問籍の児童生徒がスクーリング時に安心して登校し、可能な限り子ども同士の協働的な学びを経験できるよう、環境を整備していきます。 ・小・中・義務教育学校、特別支援学校(肢体不自由を除く)においては、看護師を派遣し、必要な医療的ケアを提供するとともに、将来の自立に向けて児童生徒本人が自身でケアを行うことができるよう、健康管理や手技指導などの支援を行います。 イ 肢体不自由児童生徒への対応 ・家庭と学校、学校と教育委員会関係課室が連携し、必要なバリアフリー等の整備に取り組んでいきます。また、保護者からの相談に対応する区福祉保健センターや地域療育センター、児童発達支援事業所、幼稚園・保育園など関係機関とも情報共有に努め、就学や進学に合わせて環境整備を行うことができるよう取り組んでいきます。 ・肢体不自由等のある児童生徒が、授業や様々な活動に参加できるよう、スポーツ実技等の体験会や教職員を対象とした研修及び情報交換会を進めていきます。 ウ 特別支援教育支援員等の配置 ・日常的に見守り支援や生活介助を必要とする児童生徒に対する特別支援教育支援員の配置、聴覚障害のある児童生徒に対するノートテイクボランティアの配置など、障害等により支援を必要とする児童生徒への取組を継続していきます。 ・障害等により、専門的な介助や支援が必要な児童生徒の校外学習等については、保護者に対応をお願いしている場合もありますが、支援体制について検討していきます。 まとめ ・医療的ケア施策の充実:特別支援学校において、児童生徒の保護者の付添解消や通学支援の取組を充実。小・中・義務教育学校等において、看護師を派遣し、健康管理や手技指導などを支援。 ・肢体不自由児童生徒への対応:必要なバリアフリー等の整備。授業や様々な活動に参加できるよう研修及び情報交換会を実施。 ・特別支援教育支援員等の配置:特別支援教育支援員やノートテイクボランティアの配置を継続。専門的な介助や支援が必要な児童生徒の校外学習等について、支援体制について検討。 4 開かれた特別支援教育、関係機関の連携強化(医療、福祉、労働等) (1) 地域療育センターとの連携 ・横浜市には、0歳から小学校期までの、心身に障害のあるまたはその可能性のある幼児児童及びそのご家族を対象に、相談から評価及び療育までの一貫した支援を行う地域療育センターが整備されています。早期からの一貫した支援の充実に向けて、地域療育センターのもつ知識や経験に基づく適切な評価・療育計画と、個別の教育支援計画・個別の教育指導計画の更なる連携・連動が必要です。 ・地域療育センターでは、横浜型センター的機能の一環として、小学校・義務教育学校前期課程の教員向けの障害理解促進のために、学校支援事業を実施しています。 ・引き続き、子ども一人ひとりの学習上・生活上の困難の改善・克服のために、これらの専門的知見をもつ関係機関の事業を積極的に活用し、連携を強化していきます。 (2) 横浜型センター的機能について ・横浜型センター的機能による学校支援の仕組みは、小・中学校等の要請により、障害のある児童生徒や支援の必要な児童生徒の教育を担当する先生がたに対して必要な助言又は援助を行うことに関して、横浜市の小・中学校等のニーズを踏まえ、市内や近隣地域の学校支援を担うリソースを最大限に生かして作られてきました。 ・「地域療育センターによる学校コンサルテーションによって、学校内のチーム体制づくりへつながった」、「学齢後期支援により、ケースの情報共有を協力的に実施でき、困りごとに早急に対応できた」等の効果が出ています。 ・他ほう、通級指導教室のセンター的機能では、小学校に比べて中学校からの依頼が少ない状況です。また、特別支援学校のセンター的機能では、進学先や転籍等の学びの場の相談が多く寄せられる等、センター的機能では言及がしにくい相談が多くあり、センター的機能の更なる活用に向けた普及啓発等が必要です。 ・引き続き、横浜型センター的機能の好事例等を小・中学校等への共有することに加え、支援のありかた等を検討していきます。 (3) 交流及び共同学習の推進に向けた考えかた  ・現在、横浜市立以外の特別支援学校に通う児童生徒の交流及び共同学習は「居住地交流(注9)」であり、横浜市立特別支援学校に通う児童生徒に横浜市教育委員会が小、中、義務教育学校での副学籍を指定して実施する「副学籍交流(注10)」とは、制度が異なっています。 ・横浜市立以外の特別支援学校に通う児童生徒も希望すれば、横浜市教育委員会が副学籍校を指定できる制度に変更できるよう、神奈川県教育委員会や県立支援学校等との協力体制を整えていきます。 ・また、本市の副学籍交流をさらに促進していくため、学校、保護者、児童生徒が、より利用しやすい仕組みにします。 (4) 教育委員会事務局内・他局の連携強化  ・障害に加え、不登校や日本語指導、食形態への配慮、高度な医療的ケアが必要な児童生徒など、多様化する特別な配慮や支援が必要な子どもや保護者への対応を適切に行っていく必要があるため、教育委員会事務局内だけでなく、他局や医療、福祉等との連携を強化していきます。また、相談支援体制の整備も併せて行っていきます。 ・特別な配慮や支援を必要とする子どもたちを取り巻く環境は、複雑化、多様化し、個別性が高くなっています。不登校や日本語指導の必要性等との重複した課題に対応するため、局内外の関係課室との連携、協働を強化していく必要があります。 (5) 就学時等の医療、福祉、卒業後の自立に向けた関係機関との連携強化  ア 就学後の支援体制構築のための体制づくり、地域療育センター等、医療や福祉機関との連携強化 ・特別支援教育の対象となる幼児の背景の多様化に伴い、児童相談所や区役所、基幹相談支援センター等と連携して、就学後の支援体制を構築していくため、SSW(スクールソーシャルワーカー)を窓口とした事務局内の体制づくりが必要となります。また、医療的ケアを必要とする子どもの就学が、特別支援学校だけでなく小・中・義務教育学校でも増加してきていることから、就学以前に支援を行っていた地域療育センター等、医療や福祉機関との連携を強化していく必要があります。学校や教育委員会事務局と医療的ケアを必要とする児童生徒の主治医や横浜型医療的ケア児・者等コーディネーター等が協働し、就学後の医療的ケアが円滑に行えるよう取り組んでいきます。 ・また、幼児児童生徒の教育的ニーズに応じた適切な支援を提供していくために、医療的ケア以外にも理学療法や言語聴覚療法などの福祉的、専門的な支援が他機関から受けられるよう、多職種連携を強化していきます。 イ 障害福祉サービス事業所、地域の障害者支援に関わる機関、労働関係機関、企業等の進路先などと連携、教職員や保護者に対する将来を見通すための情報提供 ・児童生徒が、将来、地域で一人ひとりの状況に合わせて、自立した豊かな生活ができるよう、障害福祉サービス事業所、地域の障害者支援に関わる機関、労働関係機関、企業等と連携していきます。早い段階からの児童生徒の学習や体験的な活動等への協力だけでなく、教職員や保護者に対する将来を見通すための情報提供なども積極的に実施していきます。