43頁 第3章 読書活動推進のための方向性と取組 この章では、第二次読書計画において市民の読書活動を推進するための取組について示しています。 1 全市的な読書活動の推進 教育委員会は、全市的な広報活動や読書活動の推進に向けた普及啓発イベント等への民間事業者等の協力を働きかけ、 また区役所や図書館が読書活動を推進する上で必要な、図書館や学校との連携の基盤をつくり、引き続き全市的な読書活動の推進に取り組みます。 (1) 「横浜市読書活動推進ネットワークフォーラム」の拡大 教育委員会は、第31 期横浜市社会教育委員会議がまとめた提言内容の「本を介して人と人とがつながるきっかけとなる事業の推進」に基づき、「横浜市読書活動推進ネットワークフォーラム」を開催しています。 横浜市読書活動推進ネットワークフォーラムでは、区役所、学校、図書館、読書活動推進団体、民間事業者等と連携し、ビブリオバトルやまちライブラリー等の取組を紹介するとともに、 学校司書や地域で活動する読書活動推進団体のパネル展示等を実施していますが、さらに多くの皆様に本を介したつながりを感じていただけるよう、各区との連携開催や会場規模等の拡充などのイベントの充実・拡大に取り組みます。 (2) 民間事業者との連携・協力に向けた取組 教育委員会は、「図書館総合展」(*33)など読書活動の推進に関する展示会等に出展し、 書店や出版社など読書活動の推進に関心を持つ民間事業者に対して、第二次読書計画の取組をアピールすることにより、さらなる連携・協力の働きかけを行います。 「図書館総合展」とは、図書館関連で最大のトレードショー(商品やサービスの展示会)。 図書館界全体の交流・情報交換の場、学習環境・情報流通に関する技術と知見を発表する場となっている。 44頁 コラム 平成30年度「横浜市読書活動推進ネットワークフォーラム@旭区」の様子 公開読書会について 公開読書会として、子どもに大人気の「ざんねんないきもの事典」を取り上げました。 「本シリーズの編集担当者」、「書店員」、「横浜市書館司書」、旭区で読書の楽しさを広げる取組を展開する「NPO」、それぞれの立場から、この本の魅力を語り合っていただきました。 後半は来場者にもご参加いただき、会場全体で読書会を楽しみました。 ※公開読書会の様子の写真が掲載されています。 ワークショップ 区の「読書活動推進目標」の策定に向けて、どのような目標がよいか、「本のある居場所づくり」 「ビブリオバトルの普及」等、分科会にわかれて話し合いました。 旭区まちづくりポットさんが進行してくださいました。 旭区まちづくりポットとは、旭区におけるまちづくりの実践を目指すNPOのこと。 特に本を通したまちづくりに取り組んでいます。 45頁 2 重点項目1 子どもの発達段階に応じた読書活動の推進 「子どもの読書活動の推進に関する法律」第2条<基本理念>では、「子どもの読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、 人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」とされており、 それを裏付ける調査研究 (「平成25 年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」お茶の水女子大学)もあります。 子どもが読書習慣を身につけ、自主的に読書活動を行うことができるよう、乳幼児期から学齢期まで発達段階に応じた読書活動を推進するとともに、 学校、市民利用施設、幼稚園・保育所など、子どもにとって身近な場所における読書推進の取組を充実させます。 また、読書への関心度合いの低下が指摘される中学生期、高校生期の子どもに効果的な取組を推進します。 さらに、各施設等における読書活動推進の充実に向けて連携に取り組みます。 (1) 乳幼児期からの取組 乳幼児期は、様々な言葉を覚えていくとともに、人間関係の基盤となる豊かな心情、物事に自分から関わろうとする意欲、健全な生活を営むために必要な態度等が養われる時期です。 子どもにとって家庭は、生活の拠点であり、生きる力を身に付けていく大切な場です。 子どもの読書習慣は、日常の生活を通して形成されます。 乳幼児期において、わらべうたを楽しむことは、身近な大人とのコミュニケーションを促進し、「聞く」「話す」という言葉の土台を形成します。 また、読み聞かせは、身近な大人と共に読書の楽しさを分かち合うことができ、その後の子どもの読書習慣の定着に有効です。 子どもが日々の生活の中で読書を身近に感じることができ、その年代に合った働きかけが継続的に行われるように、家庭だけでなく、図書館、地域子育て支援拠点などの市民利用施設、幼稚園・保育所など、 子どもの身近な場所における、子どもの読書活動の推進にも取り組みます。 46頁 ア家庭における読書活動の推進 家庭においては、家族で本の感想を話し合うなど、読書の楽しさを共有することにより、読書活動がより身近に感じられることが重要です。 そのため、保護者に対し、わらべうたや読み聞かせ等の大切さや意義を広く伝え、家庭での読書活動が一層進むよう努めます。 具体的には、従来の図書館や地域子育て支援拠点等の市民利用施設に加え、乳幼児健診等の場を活用した保護者を対象とした読み聞かせに関する講座や研修の実施、 絵本の情報提供や親子で参加できるおはなし会等を開催します。 イ幼稚園・保育所等における取組 幼稚園・保育所等においては、子どもが絵本や物語と出会い、多くの言葉にふれることで言語感覚を養うとともに、想像力を高めながら豊かな心を形成することができるよう、本にふれることができる環境を引き続き充実させます。 幼稚園教諭・保育士による絵本や物語、紙芝居等の読み聞かせへの支援や、絵本コーナーの充実など、読書環境の整備を進めます。また、保育者だけでなく、保護者・地域ボランティア、小・中学生等による読み聞かせ等の活動も行い、 地域の関わりの中で活発に読書活動が推進されるようにしていきます。 (2) 学校における取組 新学習指導要領を踏まえ、学校の特性並びに児童・生徒の発達段階に応じて作成した「学校図書館教育指導計画」に基づき、学校図書館の機能強化を図り、読書活動推進と授業改善に取り組みます。 教育委員会は、司書教諭及び学校司書の資質向上を図るため研修を行います。 図書館は、市立学校に対して、授業に役立つ本の情報提供により、学校図書館の資料収集を支援するとともに、多様な本を活用して「調べ学習」が行えるよう、学校向け貸出により資料提供を行います。 なお、私立等の学校や大学に対して、読書活動推進イベントの周知・参加など関係構築に向けた働きかけを行います。 47頁 ア小・中学校における取組 学校司書の全校配置により、読書センターとしての学校図書館機能は大幅に改善しました。 子どもを取り巻く社会情勢が激しく変化する中、より多くの子どもが主体的に学び、生きる力として読書力を身につけられるよう、情報活用能力の育成と読書活動推進の両面にわたる、学校図書館の機能強化が求められます。 小・中学校においては、各校で「学校図書館教育指導計画」を作成していますが、新学習指導要領の実施に伴い、『学校図書館教育指導計画作成の手引』を令和元年度に改定します。 この計画に基づき、「学習センター」「情報センター」「読書センター」の役割を担う「メディアセンター」としての学校図書館機能強化を進め、その利活用をさらに推進し、子どもの読書活動と主体的な学びを支援します。 司書教諭や学校図書館担当教諭と学校司書が連携し、図書館環境整備や本の紹介など、子どもが読書に親しめるような支援と学校図書館を活用した授業づくりを推進します。 さらに児童生徒同士が本を紹介しあう、授業や学校行事、特別活動等に合わせて学校司書等が本の紹介を行うなど、本に親しむきっかけとなる取組も引き続き進め、子どもの読書習慣の定着を目指します。 また、これらの先進事例について情報提供・情報共有を推進します。 そのために必要な資質向上を図るため、司書教諭・学校司書に対する研修をより充実させます。 学校司書が全校配置され、学校司書個々の持つスキルや経験は多様化しているため、「ブックトーク(*34)」「授業支援の実践」「学校図書館の環境整備」などニーズに合わせた研修を行います。 また、市立図書館は、学校司書の人材育成、選書支援等を通じて連携していきます。 学校図書館は、学校のメディアセンターとして、子どもが必要な時に読みたい本を手に取れる環境づくりを構築するために、資料の充実に取り組みます。 また、近隣校で学校図書館の相互利用が可能か検討するともに、教職員等に対して、市立図書館学校向け貸出を利用する際の図書運搬を支援するなど、図書館蔵書の利活用による学校図書館の充実に取り組みます。 併せて、保護者や地域のボランティア、区役所及び図書館などの関係機関との連携を引き続き推進します。 「ブックトーク」とは、あるテーマをもとに流れをつくって子どもに本を紹介すること。 ※「学校図書館資料のラベルの見方を説明する掲示」「学校司書向けビブリオバトル講座」の様子の写真が掲載されています。 48頁 イ高等学校における取組 高等学校においては、小・中学校で培った読書習慣を、より一層確かなものとするために、生徒の読書力の向上に向けた取組や、学校図書館と読書環境の整備を推進します。 各教科や総合的な学習の時間など、様々な教育活動を通じて、生徒の読書活動を引き続き推進します。 司書教諭や学校図書館担当教諭と学校司書が連携し、学校図書館の効果的な活用を図ります。 個々の発達段階を考慮し、生徒一人ひとりが、興味・関心や目的に応じて幅広い作品に触れられるよう、区役所及び図書館等との連携を深めるなど、学校図書館の環境をさらに整えていきます。 また、生徒同士が本を紹介し合う取組を進め、読書に関心を持つよう取り組みます。 ウ特別支援学校における取組 幼児児童生徒一人ひとりの障害特性や発達段階に応じた読書環境の整備・充実を、引き続き行います。 司書教諭や学校図書館担当教諭と学校司書が連携し、学校図書館の効果的な活用を図ります。 そのために必要な資質向上を図るため、司書教諭・学校司書に対する研修をより充実させます。 また、区役所及び図書館などの関係機関やボランティア等と連携し、障害特性に応じた読書活動支援の充実や、児童生徒の主体的な読書活動を支援します。 さらに、特別支援学校の専門性を生かしたセンター的機能の活用により、小・中・高等学校に在籍する特別な支援を必要とする幼児児童生徒に対する読書活動支援や、小・中・高等学校における読書環境整備に関する支援の充実を目指します。 49頁 3 重点項目2 成人の読書活動の推進と担い手の拡大 市民の誰もが豊かな文字・活字文化の恵沢を享受するためには、一人ひとりが、容易に読書に親しむことができ、読書がより身近なものに感じられることが大切です。 そのため、市民とともに読書活動推進に取り組み、身近な場所で読書に親しむ機会の充実に努めます。 また、本を仲立ちとして人と人とが交流し、読書を楽しむことができる活動など、担い手自身も楽しめる取組を引き続き推進します。 成人は、読書活動の主体であるとともに、読書活動推進の担い手でもあります。 ボランティアによる活動をさらに発展させるため、初心者向け講座やスキルアップのための研修会等の支援を進めるほか、ボランティアの活動の場・機会の充実にも努めます。 (1) 読書の日、読書活動推進月間などさまざまな機会を活用した読書活動の拡大 読書の日、読書活動推進月間などの読書に関する記念日や区内イベント、周年事業等の活用、広報活動等を通じ、乳幼児から高齢者まですべての市民が、それぞれの生活圏、様々な生活場面の中で、 読書の魅力に触れ、読書がより身近なものと感じられるような機会を引き続き提供します。 そのため、地域にある図書館や図書を有する地区センターをはじめとした市民利用施設、地域ケアプラザや福祉施設等で活動している読み聞かせグループなど、 様々な地域団体との連携を進めるとともに、民間事業者等の協力も得ながら、読書に親しみ楽しむ機会を広げていきます。 さらに市立図書館は、令和3年に開業100 周年を迎えます。 これを契機として、サービスを充実するとともに、全館で記念イベント等に取り組みます。 (2) 高齢者や障害のある方への読書活動支援 高齢者や障害のある方は、読書に親しむ機会を得にくいなどの課題もあることから、図書館では障害者支援事業や福祉施設等の団体を対象とした貸出等を行っています。 一方、地域では高齢者や障害のある方を支える様々な福祉活動団体や施設が福祉活動を担っています。 そこで、引き続き福祉施設等を活用した読書会・朗読会等の取組を行うなど、読書団体と福祉活動に取り組む関係機関や活動団体との連携を進め、高齢者や障害のある方への読書活動の支援を進めます。 また図書館は、これらの団体や機関に対し て、グループ貸出等を通じた支援等を行います。 さらに、障害の有無や年齢に関わらず、誰でも読書に親しめるような環境づくりに向けて、ICTの活用や先進事例の情報収集に努めます。 50頁 (3) 活動の担い手自身も楽しめる取組の推進 成人の読書活動を推進する取組では、「ビブリオバトル」や「まちライブラリー」 など、本を仲立ちとして人と人が交流し読書活動を楽しむ取組が生まれ、学校や地 域施設等で実施されるなど広がりを見せています。 「ビブリオバトル」や「まちライブラリー」は、そこから担い手同士の新たな連携が生まれ、さらに活動が広がっていくことが期待できます。 また、区役所、図書館、市民利用施設等が連携することで幅広い市民の参加を促進します。 (4) 読書活動を支えるボランティアへの支援 読書活動を進めるためには、それを支える人たちへの支援が大切です。 これからボランティアを始めようとする皆様へのきっかけづくりとして、またボランティア活動をさらに発展させるため、スキルアップ講座などのレベル別講座や乳幼児向けなど対象別講座を充実します。 さらに読み聞かせ、朗読等ボランティアとして活動する機会や活動場所について、各区市民活動・生涯学習支援センター等を通じた情報提供を行います。 また、外国語の堪能な方が外国籍等の子どもたちに読み聞かせ等を行う事例もあります。 引き続き、こうした環境づくりを推進します。 読書活動推進団体やボランティアの中には読み聞かせや朗読の技術を磨き、子どもだけでなく、成人も楽しむことができ、読書に対する興味を喚起できる、団体等も活躍しています。 こうした団体等へは、継続的な情報提供のほか、市民利用施設だけでなく地域のイベント等も活用し、人々が集まる場所での活動の場・機会の提供に努めるなどにより、活動を支援します。 51頁 4 重点項目3 読書活動の拠点の強化と連携 全ての年代の市民が、容易に読書に親しむことができ、読書がより身近なものに感じられるように、図書館とともに、地区センター、コミュニティハウスなどの読書関連施設が、その機能を発揮するとともに、相互に連携し、情報共有を進めることが必要です。 引き続き、区役所と図書館が中心となって読書関連施設の情報提供機能の強化と連携を図り、市民の読書活動を支えます。 図書館は地域の情報拠点として、市民が必要とする情報の提供やレファレンス機能の強化、蔵書の充実により機能強化を図ります。 また、年齢や障害の有無等に関わらず、来館・利用しやすい図書館となるよう取り組みます。 (1) 地域の情報拠点としての図書館機能の強化 図書館は、市民にとって、自由に本を選び、読むことができる場であるとともに、市民の学習や課題解決のための地域の情報拠点として、レファレンスサービスや情報提供サービスにより、情報を得る場でもあります。 図書館は、相談を待つだけでなく、蓄積したレファレンス事例を分かりやすく編集し公開するなど、積極的に情報を発信・PR していきます。 さらに健康・福祉・環境・防災・まちづくりなど、地域の課題に役立つ情報提供や関連情報コーナーの設置を進めるとともに、関係行政機関と図書館が連携した講座の開催等により、情報を得やすい環境づくりを引き続き進めます。 あわせて、レファレンス等の図書館機能を担う司書の専門性や読書関連施設やボランティアの関係を取り結ぶコーディネート力の向上を図り、地域の読書活動推進の取組及び情報の拠点としての役割を果たすため、司書の能力向上を図る体系的な研修に取り組みます。 このほか中央図書館は、専門書をはじめとする幅広い資料の収集と、レファレンスのサポートや事例の公開など、市民の課題解決をサポートする機能を強化します。 また、社会情勢の変化のなかで、市民の図書館へのニーズも多様化しつつあります。図書館の基本的な機能である資料の収集と提供に加え、市民が気軽に集い、交流する「居場所」としての機能など、新たな役割も期待されています。 このために必要な施設環境の整備・改善について取り組みます。 さらに、図書館の蔵書を図書館以外でも利用できる図書取次サービスや移動図書館など、身近で便利な図書館サービスの充実に向けた事業の拡充に取り組みます。 さらに、広域相互利用については、残る近隣市と締結に向けて協議を進めます。 52頁 (2) 地域のニーズに合わせた図書資料の充実 それぞれの読書関連施設は、市民の読書活動を支えるため市民が必要とする図書資料を備えていることが求められます。 図書館は、市民の暮らしに役立つ情報や学びのための読書に応えられるよう、18区それぞれの地域図書館として、これまでの資料収集により構築してきた各館の蔵書構成を踏まえ、地域課題やニーズにあった蔵書の充実に努めます。 一方、市民の身近にある地区センター、コミュニティハウス等の施設は、楽しみのための読書に応えます。 このように、それぞれの施設がその利用者層に応じた蔵書を備え、市民の要望や地域の要請に応えられるよう努めます。 そのため、図書館は、地区センター・コミュニティハウス等の蔵書がより活用されるように、蔵書づくりに役立つ情報提供を引き続き行います。 また、蔵書の充実にあたっては、購入だけでなく、寄贈やサポーターズ寄附金を活用した収集に引き続き取り組みます。 (3) 地域情報の収集・学習支援・情報発信 地域の歴史や文化に関する市民の関心は一層高くなっています。 図書館は区役所、学校、自治会・町内会、民間事業者等に働きかけ、郷土の歴史に関する資料をはじめ様々な地域情報を引き続き収集・保存し、それらを活かした情報の発信を進めます。 また、郷土研究者やガイドグループ等との協働により、地域資料を活用した講座やまち歩きなど、読書活動から発展した学習支援にも引き続き取り組みます。 また、地域の課題や市民の生活課題に応じて、大学や民間事業者等と協働し、その専門的な人材や情報を活かした、質の高い講座や専門的なセミナー等の実施とあわせ関連図書を紹介することにより、市民の高い学習意欲に応じるとともに、読書への関心を高めます。 53頁 (4) ICTを活用した取組 図書館では新たにマルチメディアデイジー規格の資料の提供を開始します。 マルチメディアデイジー規格の資料は、音声と一緒に文字や絵や写真が表示される上、読み上げている文章がハイライトで表示されるため、視覚障害や学習障害等により読書が困難な方、文字が読めない方等、どなたでも読書を楽しむことができます。 電子書籍については、他都市や業界の動向を注視しながら、導入について検討していきます。 電子書籍は、来館しなくても24 時間利用が可能、文字の拡大機能、辞書機能、検索機能がついているなど、利用者の利便性向上が期待できるほか、返却の延滞がないなど、サービス面でもメリットがあります。 しかし、現時点では図書館向けの電子書籍は、タイトル数が限られており、紙の図書で利用の多い新刊の小説や児童書が電子書籍ではあまり提供されていません。 また、利用期間が定められており図書館の蔵書にならないなどの課題があるためこれらを踏まえて検討します。 図書館では所蔵している資料をデジタル化し、市立図書館ホームページ内に開設したデジタルアーカイブ「都市横浜の記憶」を通して提供しています。 「都市横浜の記憶」は、横浜市に関する歴史的資料や行政資料をはじめ、地図、浮世絵等の画像資料、市内各地域の風景写真等、Web上で、貸出等の手続きなしに、誰でも閲覧することができるサイトです。 引き続き、資料等のデジタル化を進めるとともに、機能向上に取り組みます。 ※公益財団法人伊藤忠記念財団が制作しているマルチメディアデイジー規格「わいわい文庫」の表示イメージと、 デジタルアーカイブ「都市横浜の記憶」より横浜弌覧之真景 橋本玉蘭斎貞秀 明治4年(1871)の画像を掲載しています。 54頁 (5) 障害がある方等が利用しやすい資料やサービスの拡充 視覚による表現の認識が難しい方にとっては、点字図書、拡大図書、録音図書や 音声読み上げ対応の資料の収集と提供が必要です。 電子書籍の中には、画面上での文字の拡大・縮小、読み上げ、表示の白黒反転が行えるなど、利用者の利便性の向上につながるものも出版されていますが、(4)で触れた課題があるため、電子書籍の導入については引き続き検討とします。 また、障害の有無や年齢に関わらず、利用しやすい図書館の環境づくりに向けて、わかりやすい利用案内の作成や、インターネットを通じた情報発信等にも取り組みます。 図書館では、視覚等に障害のある方も利用しやすい様々なICTを活用した資料や、サービスの種類と量的な拡充に取り組み、どなたでも読書に親しめる環境づくりを進めます。 【コラム】障害がある方へのサービスについて 図書館では、誰もが読書に親しみ読書の楽しみを享受できるよう様々なサービスを実施しています。 視覚に障害のある方に対しては、所蔵する点字・録音図書及び大活字本の貸出や、サピエ図書館を活用した図書の貸出を行っています。 さらに、音訳者が希望の図書及び雑誌を読み上げる対面朗読サービスを各図書館で提供しているほか、録音図書再生機の整備、拡大読書器の設置にも取り組んでいます。 「サピエ図書館」とは、全国の公共図書館等が加盟し、活字を読むことが困難な方々に対して数十万タイトルの点字・音声データなどを提供するウェブサービス。 社会福祉法人日本点字図書館がシステムを管理し、NPO法人全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行っている。 写真は、中央図書館 音訳者研修の様子。 55頁 (6) 関連施設との連携強化 市民利用施設との連絡会等を開催し、情報共有とイベントの開催等協力関係を深め、施設間の連携を強化し、施設情報を発信することにより、身近な読書関連施設における読書活動の推進に取り組みます。 図書館は、その専門的な情報や人材を活かして、他の読書関連施設や幼稚園・保育所等のスタッフ向けの研修や相談、情報提供等による支援に努めます。 また、読書関連施設等でおはなし会を行うなど、市民への直接のサービスも行うほか、各施設でのボランティア活動を講座の開催等を通じて支援します。 さらに、学校と連携し、子どもの読書習慣の定着、学校図書館の活性化に向けて取り組みます。 図書館は、引き続き、関連施設や学校に対し、グループ貸出、学校向け貸出等による支援も行います。 これらの需要に応えるため、定番絵本や、子ども向けの知識の本、授業での活用が見込まれる本などを充実させます。 また、市内でも外国籍・外国につながる児童生徒の数が増えていますが、日本語能力の向上のためには、母語での多読習慣も効果的とされています。 日本や外国の物語、国語科で使える教材など母語で書かれた図書を充実させ、学校向け貸出などで子どもたちが手に取りやすい環境づくりに努めます。 56頁 5 重点項目4 区の地域性に応じた読書活動の推進 横浜市民の読書活動の推進に関する条例に基づき、区役所・図書館・学校は連携して、区の地域性を踏まえた活動目標を定めました。 第二次読書計画でも、区役所・図書館・学校はこの活動目標に基づき、区内の読書活動推進団体等と連携しながら、読書活動推進の取組を拡充して行います。 (1) 地域状況と活動団体等の把握 各区には、図書館、地区センター、コミュニティハウスなどの市民利用施設、学校施設を活用した市民図書室(学校開放事業において、学校施設を活用して、 地域住民や登録団体が中心となって運営されている図書室のこと)のほか、青少年施設、資料館などの文化施設、大学、民間事業者等の施設や事業所があります。 これらの施設や事業所では、職員、利用者及びそのグループ、ボランティアをはじめ、多くの市民が読書活動の推進に携わっています。 また、地域で活動する文庫等の団体は、図書館の団体貸出を利用しているものだけでも約210 団体(平成30 年度)あります。 さらに、学校、地域子育て支援拠点や放課後キッズクラブ等のほか、地域ケアプラザや福祉施設等で読み聞かせ等を行うボランティアが活動しています。 区役所と図書館等が中心となり連携し、連絡会議やアンケート等により、読書活動の推進に関する事業や施設の状況を把握し、情報発信することが必要です。 「放課後キッズクラブ」とは、市立小学校で、子どもたちが安全で豊かな放課後を過ごすための居場所。 (2) 区の地域性を踏まえた活動目標に基づく計画的な読書活動推進 各区で策定した読書活動の推進に関する「活動目標」に基づき、計画的に取組を進めます。 多くの区民が読書活動に親しめる環境を実現していくため、各区で行政主体の事業だけでなく、街中のブックカフェなど企業・団体の読書に関する事業活動や、区民が主体となった様々な読書活動推進の取組と、連携を図ることや必要な支援を行っていきます。 また、区役所・図書館・学校の様々な広報媒体を活用した広報を行います。 教育委員会は、区の特性に応じたテーマに関する蔵書コーナーの新設や、民間事業者等との連携事業など、先駆的な読書活動推進の取組を行う区を支援します。 57頁 【コラム】読書活動推進にかかるブックカフェとの連携について 昨今、街中にコーヒーを飲みながら、お客が自由に書籍や雑誌を手に取って読むことができる「ブックカフェ」が増えています。 ブックカフェは、大手書店などが新たな書店の形として行う場合や、本好きなカフェオーナーが自身で集めた書籍を公開するなど様々な運営形態があります。 いずれにおいてもカフェという場でセミナーや朗読会、読書会などが行われ、本を介して多くの人が集まり、交流する先駆的な読書活動の拠点となっています。 中区では、11 月の読書活動推進月間中にブックカフェが開催するイベントなど街中で行われる読書関連の取組をまとめて紹介する「なか区ブックフェスタ」という事業を行っています。 本市は、第二次読書計画でこのような地域に根差した取組にアンテナを張り、ブックカフェなどの本を介して人が集まり、交流する活動を、読書活動を進めるパートナーとして連携・支援していきます。 写真は、中区にあるブックカフェBankART Home(バンカートホーム)/cBankART1929の様子。 58頁 (3) 地域の読書活動推進団体と市民利用施設等との連携 区役所・図書館等は、市民利用施設や読書活動推進団体等との効果的な連携のため、引き続き情報交換の場や機会を設けます。 この機会を活用し、区内で行われている活動に関する情報を共有し、相互に交流を深めることで、地域全体で効果的な活動の推進を図ります。 特に、子どもの読書活動の推進には、家庭・学校・地域・図書館の連携が大切です。 学齢期の子どもに対しては学校が中心となり、区役所、図書館の支援を受けながら地域の読書活動推進団体等との交流を進め、学校・家庭・地域を通じた取組を引き続き進めます。 すべての年代の子どもが、身近な場所で読書に親しめるよう、地域の読書関連施設等における取組も引き続き行います。 また、国際交流や外国人支援に取り組む団体等と連携し、多文化共生を進める読書活動の推進に取り組みます。 さらに、地域でのイベント等様々な機会をとらえて読書活動の普及啓発を図るため、自治会・町内会や商店街などの多種多様な団体・機関等との連携も進めていきます。 写真は、地域子育て支援拠点にこてらす(瀬谷区)での読み聞かせの様子です。 (4) 読書活動推進団体のネットワーク化の推進 読書活動推進団体等のボランティアによる活動は、地域の読書活動を支え、その活性化に大きく貢献しています。 しかしながら、ボランティア活動の多くは学校や施設ごとに行われている状況です。 そこで、区役所・図書館・学校は、交流会等を開催し、読書活動推進団体相互の交流を活発にして、ネットワークづくりを進めます。 区役所・図書館・学校とボランティア等が協働し、それぞれの強みを効果的に発揮したスキルアップのための研修会・勉強会等を開催し、活動をさらに支援します。 また、活発な取組を行うボランティアを各種広報媒体等で紹介することや、各種表彰制度への推薦等を通じて、地域の読書活動を支え、貢献しているボランティアを支援します。 (5) 地域の団体間の連携による読書活動の推進 読書活動を推進する取組とは関係の少なかった商店街や民間事業者等の協力を得やすいように、区役所等が働きかけや調整の役割を担うことで、地域の様々な団体間の連携が進むよう引き続き取り組みます。